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名すぎるカウンセラー(心理学者、精神分析家)である著者が、教育現場にカウンセリングを取り入れようと考えている先生やカウンセリングというものに興味があって講座を申し込んでみた等様々な層の受講者にカウンセリングを説いていきます。
教室の様子を逐語的に示した内容となっていて、実際に講座を受講しているような臨場感があります。それと著者の口調が非常に柔らかく、読んでいてほっとする感じがします。
受講生の方たちはみんな積極的で、どんどん突っ込んだ質問をしていきます。自説を滔々と述べるよな方も居て、河合先生がどう答えるのか少しはらはらする場面もありますが、やんわりと受講者の方たちに役立つような方向性に戻される手腕が印象的です。
カウンセリングとは何か(逆に、どういうふうになったらカウンセリングとは言えなくなるのか)、どのようにクライアント(相談者)と話したら良いのか、自分で引き受けたらいけない場合はどんなときか等非常に広範囲に話が及んでいます。
主要な部分がロールプレイによる実技指導となっており、本当のカウンセリング場面を一緒にみながら学んでいるような気持ちになれます。
特に最後の例として出てくる結婚問題の相談など、カウンセラーとしてできることがないように思えるときでも、いかに多くの「できること」が残されているか、カウンセリングの種の見出し方が身に染みるように感じました。
全編で著者の「カウンセリングとはクライアントとともに生きること」であるという姿勢を感じることができ、読んでいていて勇気づけられます。同時に、自分の患者さんへの接し方がまだまだ「カウンセリング」の域には達していないことを痛感する内容でした。