薬物依存の理解と援助 松本俊彦著

この本の序文にも書いてありますが、薬物依存の臨床は「精神医学の暗黒大陸」と言われるような知見の乏しい分野です。
私がこの本を入手した当時もあまりに専門的な(特に援助の内容まで書かれた)本の数が少なく、本書の存在が非常に有難く思えたのを覚えています。
アルコール依存症より患者数が少ないことに加えて、患者さんがその経験をオープンにしづらいことも背景にあると思います。現在でも、どのようにこの病気を治療するかを(特に具体的に長期の方針まで)考えたときに、最も重要な情報源はDARC(ダルク)など当事者を含めた援助団体であると思います。
この本はそういった中で、医療者サイドから、具体的にどのように症状をとらえ、どうやって援助(治療)をすすめていったら良いかが書いてある価値の高い本だと思います。
著者の臨床研究をそのまま掲載した部分も多く、一般の方が参考にするには厳しいところもありますが、記述は全般的に理知的ながらも、「この未開拓の分野をなんとかしよう(あるいはなんとかしなければならない)」という情熱(使命感)が感じられ、感銘を受けます。
この書より以前から指摘されて