最近は画像検査が主流で、脳内の機能的な変化を客観的に評価するときにも細胞の代謝を利用した機能的画像検査が用いられることが増えています。
画像検査よりもずっとコストが低く、機材も簡便である脳波は、てんかんや意識障害を疑った時くらいしか用いられず、精神科でも最初のスクリーニング検査でとる以外はオーダーする機会が減っているのではないかと思います。
今回は、脳の機能を脳波で評価したパターンが気分の変動や不安と関係しているかもしれないという論文をご紹介します。
特異的な脳波がうつや不安の指標となりうる
結果として、うつや不安といった気分変動と、海馬・扁桃体(脳の部分の名称)の働きを示すパターンとの関連が見出されました。
つまり、海馬と扁桃体に関連する特徴のある脳波パターン(論文の中では“βーパターン”)を持っている人は、そうでない人に比べて、うつや不安を生じやすいと考えられます。
仮説としては、記憶を司っている海馬から、侵害的な記憶に端を発する刺激が扁桃体に向かって過剰に生じるようなときに、不安が継続的に惹起されるのではないかという議論がありますが、ここでは明確にはされていません。
しかし、ここで指摘されている海馬と扁桃体の過剰な信号のやりとりを制御することで、著しいうつや不安を治療できる可能性を開く研究であり、今後の証拠固めが期待されます。