仕事休んでうつ地獄に行ってきた 丸岡いずみ著
- もりさわメンタルクリニック
- 2018年11月20日
- 読了時間: 2分

ニュースキャスター、アナウンサーの著者が、どのように仕事に無理を重ね、うつになったのか、それからどのように回復していったのかを書いた手記です。
最初の多くの部分が、著者の報道人としての仕事の描写に割かれています。
うつ病の療養の参考にしたいという気持ちで読まれる場合に、やや長い前置きのような気がしていましたが、最後まで読んで、この方がどんな風に生きてきてこのような状況になったのか理解するには必要な部分なのだと考えなおしました。
報道人としての生活や、うつに陥ってからのつらい時期も含めて、非常にありありと感じられる描写となっています。
それと、著者の性格からなのか、はっきりと物を言うところや、自分のことを客観的に見ている点など、風通しの良い印象を受けます。
著者からのアドバイスとして印象に残るのは、うつ病は「こころ」の病気ではなく、脳の病気なので、足りない物質を補ってくれる薬をしっかり飲みましょうという点です。
最近は非薬物療法に関心が向くことも多く、実際に認知行動療法に造詣の深かった著者も、自分でそれを行おうとチャートを書いてみたりしたと言います。
しかし、薬を拒否していた間に病態は徐々に悪化してしまい、そのことに後になって振り返り、上記のアドバイスとなったようです。
やはり、薬物療法も非薬物療法も使いどころがあり、著者のように生理的な部分にまで影響が強く出ている場合には、薬剤をしっかり服用するのが望ましい選択肢と考えられます。
「自分はうつ病にならない」
もともと元気で体育会系の著者は自分のことをそのように考えていたと言います。
仕事上でも、華々しく走り続けているように見えていた著者がどうして「ポッキンと折れて」しまったのか、様々な原因はあるかもしれません。
しかし、その中でも大きいのは、(本書の中でも触れられているように)「人からどう見られるか」を優先した生き方にあるような気がします。この点は、うつ病になった多くの患者さんが共通して言われる部分でもあります。
本書の最後の方で、うつを通して自分の生き方(自分の無理のないペースを尊重した生き方)ができるようになった旨の記載があります。
人生の長い道程の中で、人や組織から要求されたことに応え続けるだけではなく、どこかで(できれば早いうちに)、なんらかのかたちで、自分本来のペースや価値観を取り戻す必要があると感じました。
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