発達障害は良くなるし、人はずっと発達するという立場から書かれた本です。
著者自身も発達障害の当事者ですが、うつ病から双極性障害を発症し、何度も転職に失敗した後、一時は失踪することも考えたと言います。しかし、その後自己研鑽と試行錯誤の末、自分の「天職」を見出し、現在は外資系企業のデータ分析者やブログ『発達障害者の生き方ラボ|Hライフラボ」の執筆者として活躍されています。
この本は著者の生育歴を含めた序章的な部分から始まり、障害による度重なる困難を経験した後、どのように発達障害を「克服」したのかが書かれれています。
そして、後半に著者の経験を他者に伝えるために、実践可能なかたちである「生き方」としてまとめたマニュアルが続きます。
自分が行ってきたやり方がどのように発達障害の「克服」に有効であるのか、読書量の多い著者ならではの広範な引用とともに紹介されています。
多くの本が、特性を理解し受け入れることで、現実との接点を見出すこと(ある意味では「妥協」しながらやっていくこと)を主眼としているのに対して、この本は発達障害の改善に取り組む方法を示しています。
読書会に参加してのプレゼン(相手の印象や思考を推測する訓練になる)や「天職」探し(“フロー”と呼ばれる最もその人の能力が活性化する状態を得るために重要)など、ここに示されている方法の一部については、多くの方に実施可能な方法か異論のあるところだと思われます。
しかし、今後「発達障害は良くなる」という視点はますます重要性を増していくだろうと思われ、この本はそのような視点で書かれた本の中でも説得力があり、読み応えのある内容だと感じました。