抗精神病薬という分類がなされる薬剤があります。統合失調症のみでなく、躁うつ病などの感情障害、認知症の行動心理兆候(周辺症状)、発達障害の2次障害、強い不眠や不安・焦燥などに使われ、応用範囲の広い薬剤です。
この薬剤がドーパミン等の神経伝達物質の働きを調整し、症状の軽減に効くことは分かっているのですが、実際の脳の中でどの部分にどのような働きをもたらすのか、その詳細は分かっていません。
今回ご紹介するのは、この種類の薬剤の中でも代表的なリスペリドン(リスパダール)の効き目について調べた研究です。
リスペリドン単剤療法のデフォルトモードネットワーク(DMN)内における機能的・解剖的接続への影響とその差異
38人の健常ボランティアと42人の薬剤を使用したことのない統合失調症の方が参加し、脳のはたらきが分かる画像検査を受けました。
リスペリドンという抗精神病薬によって治療後の統合失調症の方では、ある脳の部位(後帯状皮質、楔前部、内側前頭前野)の神経接続は改善しており、これが陽性症状(幻聴や幻覚)の改善に関連していると思われました。
また、一方でデフォルトモードネットワーク(DMN)と呼ばれる安静時の脳の働きに関与する神経接続においては変化を認めませんでした。
脳の働きを詳細に画像で評価する方法が、近年非常に向上しており、今後もこのように薬剤の効果を実際の脳の中での働きとして理解できるようになってくると思われます。
医学の歴史の中では、薬剤の効き方が、症状の原因解明に役立った例が多く、統合失調症の病態理解のために今後もこのような研究が進むことが望ましいと思われました。