自閉症スペクトラム障害においては様々な認知機能領域の障害が指摘されていますが、どのような頻度でそれらの障害が認められるのかが明らかでない部分があります。
これらの頻度や重要性の把握ができるとより有効な認知機能へのアプローチが可能になるのではないかと考えられます。
今回は、以上のような発達障害の認知機能に関する動機を背景とする包括的な研究(メタ分析)がありましたので、ご紹介します。
Patterns of Nonsocial and Social Cognitive Functioning in Adults With Autism Spectrum Disorder A Systematic Review and Meta-analysis
発達障害における社会的・非社会的認知機能のパターン
DSM-Ⅲによって発達障害の診断基準が大きく変化した1980年から2018年7月までのデータで、3361人の発達障害当事者を含む75の研究が分析の対象となりました。
①最も大きく障害が現れていた(large impairmentと表現)のは、“こころの理論(theory of mind)”と言われる相手の心情の読み取りと感情の受容・処理の領域でした。
②次に、中等度(medium impairmentと表現)だったのは、処理速度と言語的学習・記憶の領域
③最も低い程度(the least impairmentと表現)だったのは注意・警戒と作動記憶(一時的な記憶)の領域でした。
特に障害として目立ったのは社会的領域で、対人関係の開始・維持に影響の大きい部分と思われました。
発達障害の特性は広範囲に及び全体としての理解が困難な面もありますが、上記のような結果を見て、特に社会的困難に直接つながっている部分に注目したいと思いました。