
肥満と糖尿病、心臓疾患、動脈硬化等との関連は以前から知られており、肥満が万病の元として扱われる所以となっています。
実際、肥満組織からは体全体の調子に影響を与える炎症性のサイトカイン(体内で様々な反応を引き起こす細胞間の情報伝達物質のようなもの)が分泌されることも分かっており、現在分かっているよりはずっと広範囲に身体疾患に関わっている可能性があります。
今回は、認知症の背景となる脳体積の減少と肥満との関連について調べた研究を説明いたします。
肥満指標(BMIと腹部/臀部比率)と脳体積の関連
イギリスのバイオバンクという大規模な生物データベースを利用した研究で、約1万人のデータが分析されました。
その結果多くの肥満関連指標が脳の体積と反比例的関係(一方が増えるほど、もう一方が減るという関係)であることが分かりましたが、特に「中心性の肥満」と言われる臀部よりも腹部の周囲が大きくなる肥満で、脳体積の減少が著しくなっていました。
この体の腹部を中心とする肥満のタイプは、内臓周囲の脂肪蓄積とも関連し、肥満の中でも健康への影響が大きいと言われます。
今回の調査においても、認知症の背景にある脳体積の減少に大きな影響を与えている可能性が指摘され、糖尿病等の身体疾患のみではなく、広く精神機能(認知機能)の低下要因となっていると考えられました。
この研究は肥満の影響を長期的な認知機能にまで視野を広げてみるきっかけになる内容であると思われました。