脳の機能を知るために最近、fMRI(ファンクショナル・エム・アール・アイ)等の機能的画像検査(見た目だけではなくて働きが分かる画像検査)が使われます。しかし、これらの検査機器は非常に高価で、大きな規模の施設でしか設置できないことがほとんどです。
脳のどの部分がどのような働きをするのか知る方法として、もう少し経済的には負担が少ない方法もあります。頭蓋の外部から電気的刺激を行うことによって認められる思考や感情の変化を測定する方法で、これをtDCS(Transcranial Direct Current Stimulation: 経頭蓋的直流刺激)言います。
まだ、十分確立されていない技術で、どの部位をどの程度刺激したらどのような変化を来すのか等がはっきりしません。
今回は前頭葉の刺激でどのような変化が生じるのかを調査したメタ分析(複数の研究を再吟味してより信頼性の高いデータを生み出そうとする分析手法)について説明させてください。
tDCSによる前頭前皮質への刺激で社会的行動が変化するだろうか?
2196人の参加者を含む、48本の研究が分析の対象となりました。
全体としてこの部位へのtDCSは大きく社会的活動を変化させていました。
最も影響が大きかったのが、危険を冒す行動・先入観・過剰な食事摂取の減少でしたが、攻撃性・衝動性・不正直には効果がありませんでした。
tDCSは上記のように一部の望ましくない活動を減少させる効果があることが分かりましたが、一方で全ての行動に影響があるわけではないことも示されました。
この手法は比較的簡便で、徐々に研究が進みつつあるところですが、このような影響を及ぼす行動の限界を踏まえた上で、安全に十分配慮して使用されるべきであると思われました。