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アルコール関連肝疾患に対する肝移植について


ウィルス性肝炎や肝臓癌などで肝臓の機能が低下し、他に治療の手段がない場合に肝移植が検討されます。

アメリカでは17000人が肝臓の移植を希望する待機リストに載っており、日本の臓器移植ネットワークのホームページでは2018年12月31日で340人が臓器移植を希望されています。

今までは、上記のようにウィルス性肝炎などが主な移植対象疾患でしたが、特にアメリカでは事情が異なってきているようです。

現在、アメリカでは肝移植が行われる原因疾患の第1位はこれまでのC型肝炎に代わってアルコール性肝硬変などのアルコール関連肝疾患となっています。

これには、C型肝炎の薬剤治療が以前よりも有効となり、肝移植の適応となるほどの重症化のケースが少なくなったことも一因とは言われていますが、アルコール関連疾患に対する対応自体が変化したこともあるようです。

アメリカにおけるアルコール関連疾患に対する肝移植の傾向と長期経過

アメリカ全土多数の施設で治療を受けている32913人の肝臓移植適応患者が調査の対象となりました。

①アルコール関連疾患の全肝移植の中に占める割合は2002年の24.2%から2016年36.7%に大きく増加していました。

②アルコール関連疾患の肝移植が増えた部分のおよそ半分(48%)はC型肝炎による肝移植が低下したためであると考えられました。

③予後(肝移植を受けたあとの生存率)については5年生存率がアルコール関連で79%、それ以外で80%でした。10年生存率は同様に63%と68%でした。

④全体として肝移植後の死亡について、アルコール関連疾患ではそうでない場合に比べて11%多いことが示されました。

このようにアメリカにおけるアルコール関連疾患に対する肝移植の割合は大きく増加しており、日本でもこの傾向が生じる可能性があります(一方で、移植数自体が非常に少ないことやアルコール関連疾患に対する認識を考えるとアメリカほど移植が行われることはないことも考えられます)。

現在は、6か月の断酒期間が肝移植の条件とされていますが、この条件が必ずしも移植後の再発率を低下させるわけではないという議論もあり、アメリカでは条件についての緩和あるいは、より詳細なケースワークによる総合的な判断に移行しているようです。

日本においても、アルコール関連疾患は重症肝不全の主な原因の一つであり、今後どのような治療方針をとっていくのか、アルコール問題に関する認識も含めて検討すべき時期が来ているような気がしました。

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