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もりさわメンタルクリニック

境界性パーソナリティの早期死亡


「境界性パーソナリティ障害」という情動の不安定さと衝動性を特徴とするパーソナリティ(認知や行動の様式)の障害があります。

以下でいくつかの説明を抜粋します。

「境界性パーソナリティ障害」

境界性(ボーダーライン):1938年にアメリカの精神分析家アドルフ・スターンによって、神経症の治療として行われる精神分析を行うことにより状態の悪化するタイプの人々に対して初めて用いられた言葉。神経症と精神病の境界線(ボーダーライン)という意味。

境界例:リストカットや自殺企図を繰り返し、周囲の人々を振り回し、信頼関係を維持するのが難しいケースに用いられた診断名。境界性パーソナリティ概念の元になった。

DSM-5の診断基準

対人関係、自己像、感情などの不安定性および著しい衝動性の広汎な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。

 以下のうち5つ以上によって示される。

①現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力

②理想化とこき下ろしとの両極端をゆれ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係様式

③同一性の混乱:著明で持続的で不安定な自己像または自己感

④自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域わたるもの(例:浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、むちゃ食い)

⑤自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し

⑥顕著な気分反応性による感情不安定性(例:短期間しか持続しない強い不快気分、いらだたしさ、または不安)

⑦慢性的な空虚感

⑧不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難

⑨一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離性症状

上記のように自傷や自殺企図を繰り返すことが多いので、死亡原因として自殺が注目されます。しかし、そうした原因のみでなく、境界性パーソナリティ障害の患者は早期死亡の傾向があることを示した調査をご紹介します。

境界性パーソナリティ障害と他のパーソナリティ障害の自殺や他の原因による死亡についての比較(24年間の前方向的追跡)

290名の境界性パーソナリティ障害(以下BPD)の患者と比較の対照として72名の他のパーソナリティ障害(以下OPD)の患者が追跡調査(2年ごとの情報収集)されました。

24年の追跡期間中に以下のことが示されました。

①5.9%のBPD患者と1.4%のOPD患者が自殺で死亡していました。

②14.0%のBPD患者と5.5%のOPD患者が自殺以外の原因で死亡していました。

その他、論文中では自殺が完遂される因子としてより長い入院期間や他の疾患の合併などが挙げられてしました。

上記のようにBPDでは自殺以外にも早期死亡の傾向が強くなっています。その中で最も多い原因として、心臓など循環器疾患での死亡が挙げられていましたが、この点は物質乱用との関連性が指摘されていました。

上記のように、BPDにおいては自殺のみではなく、多くの行動様式が健康を害する方向に向かう傾向があります。

どのようにすれば少しでも回復につながるのか、自殺防止のみではない視点から相談できるようにしたいと思いました。

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