トラゾドンの抗認知症効果について

アルツハイマー型認知症発症のしくみとして検討されているものの一つに膵臓の内分泌系の異常がありますが、その反応の調節因子として(本来は抗うつ薬である)トラゾドンが作用する可能性が指摘されていました。
そして今までのところ、マウスを用いた実験でトラゾドンが神経を保護する作用があることが示されてきました。
今回は、このトラゾドンの抗認知症効果についてイギリスの処方データをもとに調べた研究をご紹介します。
Trazodone use and risk of dementia: A population-based cohort study
トラゾドンの使用と認知症リスク: 集団ベースのコホート研究
2000年から2017年までのデータが調べられ4,596人のトラゾドン使用者と22,980人の他の抗うつ薬使用者の認知症リスクが比較されました。
結果は以下のようになりました。
①トラゾドンを使用していた場合の方が他の抗うつ薬を使用していた場合よりも、認知症になる危険率が高かった(1.80倍)
②トラゾドンを使用しているグループの方が認知症になるまでの平均期間が短かった(トラゾドン1.7年 vs 他の抗うつ薬4.3年)
上記の結果をみると、トラゾドンを使用している方が、早く認知症になり易いような印象を与えてしまいます。
しかし、論文中でも指摘されていますが、トラゾドンを使用する場合というはうつの症状というよりは睡眠障害が目立つ場合が多く、それが認知症の関連症状であった場合、当然認知症の危険率は高くなってしまいます。
以上のようなことを考えると、少なくともトラゾドンが認知症の危険性を上昇させるということではなく、明らかに発症を抑える作用まではないと、冷静に受け止めるほうが良さそうです。