認知行動療法の話をするときに、しばしば「セルフモニタリング(自己観察)の力」という話をします。
自己をできるだけ客観的に見つめることは認知行動療法の基本と言えます。
そのための方法として様々なモニタリングの方法が開発されており、その中でもウェブサイトを利用したものが簡便で、飽きない工夫もしっかりされている印象があります。
今回はObesity(肥満)の専門誌に掲載されていた食事内容のモニタリングに関する論文をご紹介します。
しばしば記録するとたくさん痩せる: 減量のためのオンライン食事記録
142名(女性90.8%、平均BMI 35.8 kg/m2)が調査の対象となりました。
以下のことが示されました。
①食事の記録にかける時間によっては、体重減少に大きな差はありませんでした。
②1日の食事の記録(何をいつどれくらい食べたか)を行う回数によって、体重減少の成果に大きな差がみられました。例えば、体重減少が10%以上では2.4回、5%以上では1.6回となっており、さらに体重減少5%以上で2.7回、5%未満で1.7回と、やはり記録回数と体重減少の幅には明らかな関連が認められました。
このような結果から、セルフモニタリングが成果をあげるためには、1回の時間はかけなくても良いから、記録回数を多くするべきこと。記録回数は2回以上、できれば3回行うことが望ましいと考えられます。
自分を見つめることの重要性を考えるとき、以下の句を思い出します。
“他人の頭の中に何が起こっているか気をつけていないからといって、そのために不幸になる人はそうたやすく見られるものではない。
しかし、自分自身の魂のうごきを注意深く見守っていない人は必ず不幸になる”
『自省録』第2章-8(マルクス・アウレーリウス)
「時間はかけなくても良いから、回数は多めに」……セルフモニタリングのコツとして覚えておこうと思いました。