催眠療法が痛みの軽減に有効であることは以前から指摘されていましたが、客観的なデータに乏しい面がありました。
特に最近アメリカでは疼痛に対する麻薬性鎮痛剤の過量投与による死亡が問題となっており、鎮痛剤によらない疼痛管理が模索されています。
今回は子どもに対する脊柱側弯症の術後疼痛で、バーチャルリアリティによる催眠療法の効果を調べた研究をご紹介します。
脊柱側弯手術での術後疼痛と麻薬使用に対するバーチャルリアリティ催眠の効果
21人の脊柱側弯の手術を受けた子どもが調査の対象となりました。
10人は通常の疼痛管理に加えて術後3日間毎日20分のバーチャルリアリティ催眠(HypnoVR®, helmet Samsung Galaxy S7 Gear VR®)を受け、11人については通常の疼痛管理のみが行われました。
疼痛の程度を示すスコア、麻薬性鎮痛薬の使用、嘔吐のエピソード数、疼痛や不安に対する補助薬の要求回数、経口摂取開始/尿道カテーテル抜去までの時間、起床が可能になるまでの時間、退院までの日数が測定されました。
結果として、退院までの日数以外のすべての指標で、催眠を使用したグループのほうが低下しており、例として以下のような点がありました。
①麻薬の使用は催眠のグループで20%のみ、他のグループでは62.5%でした。
②抗不安薬の使用については同様に、37.5% vs 100%でした。
③起床できるようになるまでの時間は、23時間 vs 44時間でした。
以上のように、全体として催眠を行ったグループは薬剤の使用量が少なく、身体の回復も早いことが示されました。
麻薬使用による弊害が問題視されている背景を考えると、今後も副作用のない非薬物的介入方法が注目されていくと考えられました。