以前に他の薬剤で改善を認めないうつ病に対する治療として麻酔薬であるケタミンが選択されることがあると紹介しました。(記事:麻酔薬(ケタミン)の抗うつ効果)
うつ病に対して、異なるしくみを持つ2剤以上の抗うつ薬や追加薬剤による効果の増強を図った場合でも、症状の軽減を認めなかった時に、“治療抵抗性”という言葉を使いますが、ケタミンはこのような病態にも他の薬剤に比べて効果が高いことが分かっています。
しかし、注射による投与で、有効な時間が短く、持続的な効果を求める場合には適応に障害があると考えられてきました。
今回は、ケタミンの持続的な効果を得るための投与法を含む研究をご紹介します。
治療抵抗性のうつ病に対する単回、反復、そして維持療法のケタミン注射
治療抵抗性のうつ病と判断されている41人が、研究の対象となりました。
まず、最初はケタミンを使用するグループと偽薬としてミダゾラムという抗不安薬を使用するグループに分け、抗うつ効果を比較しました。ここではケタミンがMADRS(Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale)といううつ症状の指標で10.9のスコア減少を見せ、ミダゾラムの2.8を大きく上回りました。
さらに投与を反復することにより、作用の増強・維持が認められ、最終的には週に1回の投与で抗うつ効果の維持が可能ではないかと考えられました。
治療抵抗性のうつ病に有効とは言っても、すべての患者さんに有効とは限りません。上記の結果も、反応が良好であった方において効果の維持が可能であったという内容なので、有効性を過信はできないと思います。
しかし、治療が効きにくい患者さんに有効かも知れない治療の選択肢がふえることは非常に有難いと感じました。