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こころの処方箋 河合隼雄:著


河合隼雄先生のことも、この本も有名すぎるかもしれません。

臨床心理学者の書いた連載コラムをまとめたもの、という紹介では誤解させる部分が大きいような気がします。

まずは、心理学の話は確かに良く出てくるのですが、あまり学問っぽくはありません。大変失礼ではありますが、飲み屋でうんちくを語る物知りおじさんというような……そんな雰囲気があります。

それは(ご本人が「あとがき」でもふれられていますが)内容が「ふむふむ」と読むことができるような、私たちが心に抱いている「常識」の範囲を逸脱していないからだと思われます。

こころにはあったけれども上手いことは言えなかった、いろいろな思いや気づきを言葉にしてもらっている感覚があります。

発見による「驚き」ではなく、既視感をともなった親しみのある「安堵」……。

多くの人にとってそのような感覚を持って接することができる言葉選びがなされているように思われます。

各コラムの題名も含蓄があり、興味をひかれます。最初からあげていくと

人の心などわかるはずがない、ふたつよいことさてないものよ、100%正しい忠告はまず役に立たない、絵に描いた餅は餅よりも高価なことがある、「理解ある親」をもつ子はたまらない、言いはじめたのなら話し合いを続けよう、心のなかの自然破壊を防ごう、灯台に近づきすぎると難破する、イライラは見とおしのなさを示す、己を殺して他人を殺す、100点以外はダメなときがある、マジメも休み休み言え……

私がすでにもっているもの、抱いている認識を違う方向からながめてみるような内容が目立ちます。

おそらくこのあたりはカウンセリングのやり方とも共通していて、相手の中にないものを持ってくるのではなく、相手の中にあったけれども、気づかれていなかったものを、一緒に見つけて埃を払う……そういう営みの大切さを感じます。

一つ一つのコラムは短く読み易いので、眠る前などにちょっと読んで、「たいせつなもの」を感じるのにも向いているような気がします。

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