副題には「起立性調節障害(OD)克服と『だいじょうぶ感』をはぐくむ」とあります。
「不登校」に取り組んでいる小児科の臨床医が書かれた本で、前半は起立性調節障害(OD)についての診察場面を中心に進んでいます。
脱・「不登校」とタイトルにありますが、決して「不登校」という選択を全面的に否定しているわけではなく、著者紹介のところにかかれているように「『登校しないこと』そのものは、必ずしも悪いことばかりではありませんし、そう決断したことで初めて得られるもの」もあり得るという姿勢で書かれています。
起立性調節障害(OD)というのは、本文中の説明を借りると「特に、寝ている状態や座っている状態から、立ったときなどに、脳への血流がうまく維持されないことから、頭痛などをはじめとした多くの症状が出る」病気で、「自律神経系の異常に原因がある」と考えられています。
午後以降には元気になって、ゲームや他の活動に熱中したりするため、「さぼり」や「怠け」ではないかと誤解を受けやすく、長期に渡って本人の困っていることが理解されないことで知られています。
起立性調節障害が不登校の原因のすべてというわけではなく、本書では他に注意欠陥多動障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、ネットやゲームとの付き合い方の問題、「だいじょうぶ感」の低下等を主としてあげています。
特に敢えて「だいじょうぶ感」とやわらかい言い方をされている「自己肯定感」について重要視しています。
「だいじょうぶ感」= a(こどもの特性など)
×b(親を含む家庭環境)
×c(学校など外的環境)
×d(自然)
+e(その他)
という式で、「だいじょうぶ感」に影響の大きい4つのファクターを紹介しています。
起立性調節障害(OD)については、著者の診療を受けている「不登校」のお子さんの95%以上が起立性調節障害であるという記述もあり、一度は疑ってみるべき病態であるとは思われます。
ただ、起立性調節障害の治療を行っても改善しない場合も多く、そのような場合は、あまり「原因」にこだわり過ぎず、本人の体質や心理的側面への理解を深めることに重点を置くほうが良いと考えられます。
本書は、小児科医の立場から「不登校」を幅広くとらえた本で、身体的な要素も含んでおり、非常に参考になる点があると思います。