
昨日お伝えしたglutamate receptor type 5 (mGluR5)という物質の代謝で、PTSDの希死念慮を予測するというのも、その一種であると思われますが、精神機能を客観的指標に置き換えるという努力が続けられています。
今回は、精神的苦痛後のアンヘドニア(失感情)の減少が脳の一定部位の活動性によって測定できるという内容の研究をご紹介します。
アンヘドニアの減少、そして左腹側線条体の報酬反応性と6ヶ月後の若年成人における生活満足度改善の関連
精神的苦痛を経験した52人の若年成人に対して、アンヘドニア(失感情)の程度と脳の腹側線条体と言われる部位の報酬に対する反応性を調査しました。
報酬に対する脳の反応は、カードの内容を予測して金銭の報酬が発生するテスト中の機能的MRIで測定されました。
結果、腹側線条体の報酬反応性が高いほど、精神的苦痛からの回復力が高い(アンヘドニアの減少が大きい)ことが示されました。
これらのことにより、腹側線条体の報酬に対する反応をソフトで算出した値が、精神的回復の客観的な指標(バイオマーカー)として使用できたり、この部位の機能改善を図ることで治療につながったりする可能性が示されました。
このようなバイオマーカー確立の努力は正確な診断のためにも重要ですが、同時に精神症状を客観的異常として認識していただくことで、偏見を軽減し、患者さんが休める環境を作るためにも重要であると思われます。