昨日は認知のプロセスを重視する「第3世代認知行動療法」について少し説明させて頂きました。(第3世代認知行動療法について)
本日はこの第3世代の方法が特に期待されている領域の一つである物質依存への適用の有効性を調べた論文をご紹介します。
アルコール依存症に用いたマインドフルネスとアクセプタンス・コミットメント・セラピーのシステマティック・レビュー
システマティック・レビュー(複数の研究結果を統合してより信頼性の高い知見を得ようとする分析)で、マインドフルネスを用いた11の研究とアクセプタンス・コミットメント・セラピーを用いた6の研究が対象となりました。
研究の中にはランダム化比較試験(さまざまな属性の偏りのないようにランダムに治療内容の異なるグループ分けを行い、効果を確認した試験)、ランダム化はされていない比較試験、比較対照を持たない研究など、さまざまなエビデンス・レベルのものを含んでいました。
結果を統合したところ、第三世代の認知療法は少なくとも、無治療やこれまでのアルコール依存症に対する心理社会的治療単独よりは、効果を上げる可能性が示されました。
しかしながら、ほかの世代の(認知)行動療法を含む他のセラピーとの違いを調べた研究は少なく、その有効性の違いは定かではありませんでした。
よって、第3世代認知行動療法は、他のセラピーと同様に、物質依存(や合併する精神疾患)に対して有効と言えるかもかもしれませんが、現時点では「第3世代」独自のアイデンティティとして、突出した結果を得ているとは言い難いようです。