アルツハイマー型認知症等の精神(神経)疾患については、発症リスクを高める遺伝子が同定されています。
遺伝子のような根本的な部分で発症への影響が分かると、精神疾患の発症メカニズムが明らかになり、治療の方法も、原因療法に近いものが可能となることがあります。
うつ病については、過去において、いくつか発症に関与するのではないかという遺伝子の候補が挙げられてきました。しかし、どれもが影響の有無をはっきりできないまま、議論の余地が残った状態で経過してきました。
今回は大きな規模で、これまでに指摘されてきたうつ病の候補遺伝子の影響を明らかにしようとした研究をご紹介します。
うつ病に関して、歴史的な候補遺伝子や、環境との相互作用で発現する遺伝子仮説を支持する証拠はない
最大443,264までのサンプルデータが分析され、候補遺伝子の遺伝子多型や環境との相互作用によって発現する形質について調べられました。
うつ病に関する複数の定義、虐待や経済的な困窮などの環境要因についても様々な条件でうつ病との関連が分析されました。
しかし、これまでに指摘されてきた候補遺伝子をうつ病の原因と考えさせるような、いかなる関連性も、今回の研究で示すことはできませんでした。
多くの精神疾患は遺伝子などの生物学的な原因や環境の要因など多様な原因が作用して生じるとされています。
これからも、うつ病について多様な側面から原因を考えていく必要性を感じました。