様々な精神疾患で脳体積が減少することが示されていますが、脳体積の減少(脳萎縮)が起こりやすい場所は疾患ごとに異なります。
特にアルツハイマー型認知症をはじめとする神経変性疾患では、萎縮の部位と脳機能の喪失とを結び付けて説明がなされます(例:脳の側頭葉内側の萎縮⇒記憶障害)。
しかし、多くの精神疾患において、ある疾患に関連して認められる脳体積減少という所見が、実際に特定の神経回路に沿って起こっているのか、それがどのような機能障害に結びついているのかを示すことは困難であることが少なくありません。
今回は、統合失調症において認められる脳体積の減少が、神経回路にそって起こっているのか、多くの箇所について、統合失調症の病期を跨いで調べた研究をご紹介します。
統合失調症における神経回路に基づく大脳皮質減少の証拠
70人の初発エピソードの統合失調症患者、153人の慢性期の患者、47人の治療抵抗性の患者について、対照と148か所の皮質の厚さが比較されました。
結果として、ランダムに選ばれた5000セットの脳部位のペアよりも、神経回路として関連性のある脳部位のペアが、同様の萎縮傾向を示していました。
つまり、統合失調症の脳萎縮は関連なく生じているのではなく、特定の神経回路の分布に基づいて生じていることが示されました。
こうした分析で、漠然とした部位の体積減少として認識されていたものが、特定の神経回路の萎縮として表現できる可能性があります。
今後、症状と神経回路萎縮の対応関係ががもっと高い精度で語ることができ、適切な治療につながる可能性を感じさせる研究でした。