
高齢者が転倒した時に、一番気になるポイントは、頭部を打っていないかということです。
もちろん頻度としてはもっと他の事象(例:大腿骨頸部骨折や肋骨骨折等)の方が高いのですが、もっとも生命予後に関わるという点で、真っ先に確認するべきという意識が働きます。
不幸にも頭部を受傷していた時に、外傷性くも膜下出血、急性(慢性)硬膜下出血などの病態が有名ですが、一過性の意識障害以外は目立った所見のない、いわゆる“脳震盪concussion” といわれる状態もしばしば経験されます。
今回は、脳震盪後の認知能力低下とその時の予防として高脂血症薬(スタチン)が有効かどうかを調べた研究をご紹介します。
スタチンの使用と脳震盪後の認知症の関連
脳震盪を経験した65歳以上の約30000人を4年間にわたって調査しました。
脳震盪後を経験した場合には、そうでない場合に比べて認知能力低下が大きくなっていました。
また、高脂血症の薬であるスタチン製剤を服用している場合には、脳震盪後でも認知能力低下が抑制されていることが分かりました。
スタチン製剤については、これまでに外傷後の脳浮腫・酸化ストレス・アミロイド蛋白の凝集・神経組織の炎症等を軽減させる作用があるのではないかと指摘されてきました。
さらに、スタチン製剤の効果の広がりを感じさせる研究であると思われました。