昨日、子ども時代のADHDと大人のADHD(様症状)が不連続であるということをお伝えしました。(記事:ADHD(症状)はどのような経過をとるか?)
これは、ADHDの診断基準のうち、子ども時代からの発症を本当に要件とすべきかどうかというところも含めて、以前から議論になっている点です。
今日は子どものADHDと大人のADHD(症候群)について検討したコホート研究(対象となる集団を決めて追跡する研究)をご紹介します。
Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Trajectories From Childhood to Young Adulthood Evidence From a Birth Cohort Supporting a Late-Onset Syndrome
子供から青年期におけるADHDの追跡結果
ブラジルのペロタスという都市の一定期間に生まれた子ども5249人を対象とした研究です。
上記のうち、11歳の時には393人(8.9%)がADHDと診断され、18~19歳の時点では(子供時代の発症という要件を除く)診断基準を492人(12.2%)が満たしました。
また、子ども時代のADHDのうち60人(17.2%)のみが青年期においてもADHDの症状があり、青年期のADHD(症候群)のうち、60人(12.6%)だけが子どもの時にもADHD症状がありました。
つまり、多くの場合、子ども時代のADHDは青年期まで続かないし、青年期のADHD(症候群)は子ども時代にまでさかのぼることができないことになります。
青年期以降にはじめて診断されるADHD(症候群)の大部分を、子ども時代の発症を要件として診断から除外するのは、臨床の感覚からすると「厳し過ぎる」ように感じます。
遺伝学的な背景も含めて疾患概念の再構成や、そこから漏れてしまった場合の治療についての検討が必要であるように思われました。