臨床精神医学の分野で尊敬を集める精神科医の神田橋先生が参加した座談会の様子を記録した内容です。
まず、章立てのみ抜粋させてください。
第1章 発達障害者は発達する
第2章 せめて治そう! 二次障害
第3章 問題行動への対処 「未熟な自己流治療」という視点
第4章 発達障害と教育・しつけ
第5章 治療に結びつけるための診断とは?
第6章 一次障害は治せるか?
第7章 養生のコツをつかむコツ EBMと代替療法
「目の前にいる人をなんとか、少しでもラクにするのが医者の仕事」
そのように言われる先生が、発達障害の患者さんを「ラクにする」方法について語っています。
他にも感覚統合訓練に取り組まれている岩永竜一郎先生、臨床心理士・言語聴覚士の愛甲修子先生、当事者の藤家寛子さん、出版元である花風社の代表である浅見淳子さんが対談に参加されています。
神田橋先生ばかりでなく、岩永先生も発達障害に対する「治療的」取り組みをされており、患者さんを「ラクにする」ための多くのヒントを与えてくれます。
当事者の藤家さんについても、どのように自分は障害を体感してきたか、率直に語られており、実際にどのように働きかけを行うことが患者さんを「ラクにする」のか、教えられることが多かったように思います。
すべての方が、神田橋先生の持ち味である直観的臨床知を敬愛している様子が伝わってきます。しかし、決して「信者の集会」にはなっておらず、それぞれが疑問をもち、尋ねたいことをストレートにぶつけているようにも感じます。
神田橋先生は「僕はね、苦しんでいるところが分かるものだから……」と言われます。
「分かる」根拠は医学的常識の範囲では推し量れない内容も含まれて、先生の言説のすべてを受け入れることは難しいかもしれません。
しかし、言われている内容は、根拠以前に腑に落ちるものが多く、記憶にとどまります。
神田橋先生の本は、他の本もそうですが、非常に頭を忙しくします。それだけ、言葉の使い方が巧みで、心に訴える技術レベルが高いのと、深く納得感をもたらすような「自分が感じていて言葉にできなかったことをしてもらった感」があるのだと思います。
「目の前にいる人をなんとか、少しでもラクにする」ことに興味がある人にとっては、非常に勇気づけられる内容だと思います。