バルプロ酸ナトリウムなどの抗てんかん薬を妊娠中に使用すると、胎児の発達形成に影響を及ぼすことが知られています。
今まで注目されてきたのは、二分脊椎や心室中隔欠損などの身体形成上の問題が主でした。
今回は、多種類の抗てんかん薬の妊娠中の使用について、出産した子供の問題行動について調べた研究をご紹介します。
母親が妊娠中にバルプロ酸・カルバマゼピン・ラモトリギン・レベチラセタムを単剤使用していた場合における、児の行動上の問題
研究には181人の子どもが含まれ、母親が妊娠中に抗てんかん薬を使用していたか調査されました。26人がバルプロ酸ナトリウム、37人がカルバマゼピン、88人がラモトリギン、30人がレベチラセタムを母親が服用していました。
全体として、抗てんかん薬を服用していた場合、通常よりも出産した子どもの問題行動が生じる確率が高まることが示されました。
通常、臨床的に問題となる行動の出現率が13.4%であるのに対して、バルプロ酸ナトリウムの場合は32%、カルバマゼピンでは14%、ラモトリギンでは16%、レベチラセタムでは14%でした。
他の影響する因子を調整した後で、最も影響の大きかった抗てんかん薬はバルプロ酸ナトリウムで、その他にもラモトリギンの使用で、注意障害が比較的多く生じる等の抗てんかん薬による違いが認められました。
抗てんかん薬は母体のけいれん発作等を防ぐためにやむを得ず使用を継続されることが多く、一概にその使用を禁ずるような対応は適切ではないと思われます。
抗てんかん薬の使用量を減少したり、種類を変更したりした場合の発作のリスクを検討した上で、バランスを考えた治療方針の決定が望ましいと思われました。