
遺伝か? 環境か? 疾患の原因を考える時、いつも考えるテーマです。
現在、様々な病気へのなり易さを遺伝的に知る方法があり、polygenic risk score:多遺伝子性リスクスコアとして表現されますが、こうした要因がある場合は、自分で生活上いくら気を付けても無駄なのかが気になるところです。
今回は認知症に関する遺伝的リスクと生活様式の組み合わせで、どのように認知症の発症リスクが変化するのか調べた研究をご紹介します。
生活様式と認知症発症に関する遺伝的リスクとの関連
196383人(平均64.1歳、女性52.7%)が対象となり、概ね8年間の経過を調査されました。
認知症発症の割合は
①遺伝的リスクが低い+健康的な生活:0.56%
②遺伝的リスクが高い+不健康な生活:1.78%
③遺伝的リスクが高い+健康的な生活:1.13%
ここでいう「健康的な生活」とは、「現在タバコを吸っていないこと、定期的に運動していること、健康的な食事内容であること、飲酒は適度な範囲内であること」を意味します。
①に比較して②は3倍程度になっていますが、②と③を比較して健康的な生活が、遺伝子の影響を緩和していることが分かります。
多くの要因が関与して発症する疾患で、遺伝子の貢献が大きい時、生活の中でできることが少なく感じられることもあります。
しかし、自分の遺伝的傾向を少しでも緩和するために、生活習慣を改善することは認知症においても有効であることが示されました。
遺伝的な負因があったとしても、日々なるべく良い習慣で過ごすことが大切であるように思われました。