デジタル錠の効果について
- もりさわメンタルクリニック
- 2019年7月26日
- 読了時間: 2分

比較的良く使われる精神安定効果のある薬剤にアリピプラゾール(商品名:エビリファイ)がありますが、この薬剤にはFDA(アメリカの薬品や食品の認可を行っている機関)で認可されている「デジタル錠」が存在します。
この錠剤にはセンサーが含まれており、実際にその薬剤が服用されたのかが医師に客観的に伝わるようになっています。
このような仕組みを錠剤にもたせることにより、いわゆる「アドヒアランス(患者の治療への積極的な関わり)」を促進する効果が期待できるのではないかという話なのですが、今回はこの効果について疑問を呈した論文をご紹介します。
デジタルアリピプラゾールまたはデジタルな特許拡張? 医学的証拠と科学的文献やメディアにおける情報拡散に関するシステミックレビュー
例えばアリピプラゾールのデジタル錠では月に1700ドルの費用が発生するのに対して、ジェネリックの薬剤では20ドルで済みます。
このような大きな負担が生じる薬剤での効用として「アドヒアランスの向上」が想定されているのですが、この点が承認の段階で行われた試験で十分に確認されていないと主張されています。
承認時に行われたのは、患者が指示通りに薬剤を使用できるかどうかのみで、通常薬剤の効果を確認するときに行われる前方向の二重盲検試験が行われていませんでした。つまり、実際に謳われている効果である「アドヒアランスの向上」がデジタル錠と通常の錠剤とでどのように異なるのか、確認できていないのではないかという指摘です。
また、科学的文献のうち80%(11/14)、一般的報道のうち3分の2(52/70)が効果について誤った印象を与える(misleading)であると述べられています。
実際にデジタル錠による患者さんへのメリットがどれくらいあるのか、使用経験もなく分からないのですが、大きな経済的負担が生じる内容であり、事前の公正な情報にに基づき、慎重に適用を判断するべき選択肢であるように思われました。
Commentaires