精神疾患が原因で入院した場合、退院後に最も警戒するのは自殺による死亡だと思います。
医療も含めた援助者は、本人が自殺企図に至らないように意識してサポートを行います。
今回は、このような退院後の「自殺に注意」が本当に援助者の意識として正しいのかを問う内容のメタアナリシス(複数の論文の結果を統合し、より信頼性の高い証拠を得ようとする分析)をご紹介します。
精神科入院施設からの退院後の自然死、非自然死、そして原因ごとの死亡率に関するメタアナリシス
精神科入院施設退院後の死亡に関する論文を集積し、自然死、非自然死、そして原因種別の死(自殺、事故、殺人、血管性疾患、腫瘍、呼吸器疾患、消化器疾患、感染性疾患、代謝性疾患)について分析を行いました。
結果として、退院後ごく短期間においては自殺が主であったものの、5年以上の経過では脳梗塞や心筋梗塞等の血管性疾患が死因のトップとなっていました。
また、もっと大まかにとらえると、2年以上の経過においては自然死が、非自然死を上回っていました。
上記のような結果から考えると、非常に短期的には退院後の「自殺に注意」は正しくても、数年にわたる中・長期においては、生活習慣改善や内科的治療を含めた慢性疾患をより警戒する必要性あると思われます。
精神疾患の治療に当たる場合には、生活を全体的に把握し、内科的疾患にも気を配る姿勢が重要であると考えられました。