
2016年4月にアメリカのFDAでパーキンソン病の精神症状に対する認可を得たピマバンセリンという薬剤があります。
多くの精神症状に対する薬剤(抗精神病薬)がドーパミンに対する拮抗薬(働きを抑制する薬剤)であるのに対して、この薬剤はセロトニン5‐HT2Aのみを標的としているのが特徴です(だからこそ、ドーパミンの働きを抑制することが病態の中心であるパーキンソン病で適応が得られています)。
今回は、この薬剤の新たな側面として、うつ病治療における補充療法としての役割を調べた研究)試験)について説明させてください。
うつ病で治療に対する効果が不十分な場合のピマバンセリン補充療法
通常、うつ病に対する治療はSSRIあるいはSNRIと言われる分類の抗うつ薬によって開始されますが、これらの治療効果が十分でない例が多く存在します。
このような例にピマバンセリンが有効であるのか調べるのが、この試験の目的です。
207人のSSRIまたはSNRIによる効果が不十分であったうつ病患者が試験の対象となりました。
試験の構造自体は漏れなく適正にピマバンセリンの効果を調べるために、二段階連続並行比較試験: two-stage sequential parallel-comparison designというやや複雑なやり方を採っていますが、結局は偽薬とピマバンセリンとで、SSRIやSNRIに追加したときの効果を調べています。
その結果、偽薬と比較して明らかにピマバンセリンの方が、うつ症状の改善を認めており、SSRIやSNRIを基礎の薬剤として追加を行ったときの効果が確認されました。
今後、パーキンソン病の精神症状に引き続いて適応が得られる可能性も高く、うつ病治療がSSRIやSNRIのみで行き詰まったときの選択肢として効果が期待される薬剤であると考えられました。