
統合失調症においては脳の様々な部位における異常や機能の偏りが指摘されてきました。薬剤の効果も、どのような部位を目標にするかによって大きく異ることが確認されています。
今回は、統合失調症における海馬(側頭葉の内側にあり、記憶の上で大きな働きをすると言われている部分)の前方部の活動と、場面や顔を見たときの情報処理について調べた研究をご紹介します。
初期統合失調症における海馬前方部の過活動と機能的低下
45人の初期統合失調症の患者さんが調査の対象となり、脳の働きを調べることのできる画像検査(機能的MRI)と様々な場面の画像をみてその反応を調べるテストを行いました。
初期の統合失調症においては通常、海馬の前方部は過活動となっていますが、実際に課題を行うときには機能の活性化が得られていない結果となりました。
つまり、統合失調症では普段の状態で海馬のコントロールを失っており、課題を処理するときに正常に活性化するような機能的な変化ができないということになります。
統合失調症では冒頭で述べたように、脳の機能における多くのアンバランスがみられます。今回指摘された海馬の働きは、通常統合失調症においては注目される部位ではありませんが、今後新たな治療の目標になる可能性が考えられました。