
かなり以前までは、認知療法は軽度のうつ病までは有効だけど、中等度以上には不向きというイメージがありましたが、現在では広く重度のうつ病までその効果が確認され、抗うつ薬とほぼ同等の効果があるとされています。
そのようになってくると、余裕があれば両方を行う選択もあるかもしれませんが、世界的には、それぞれの治療は単独で行った場合にもかなり高価なので、どちらかお得な方を選んで行うことも十分考えられます。
今回は、現在主に用いられている抗うつ薬(SGA:second-generation antidepressant)と認知療法のどちらがコストパフォーマンスが良いのか調べた研究をご紹介します。
認知行動療法と第2世代抗うつ薬のうつ病治療における費用対効果についての比較
アメリカ合衆国における初発のうつ病患者さんたちが調査の対象となりました。
1年あるいは5年の経過で実際にかかる費用や、生活の質も考慮に入れた“QALYs”という指標も検討に加えて調査したところ、
①抗うつ薬は1年の経過で考えると約70%の確率で、認知行動療法より費用対効果が高い。
②認知行動療法は5年の経過で考えると75%の確率で、抗うつ薬より費用対効果が高い。
つまり、短期的には抗うつ薬の方がお得な可能性が高いが、より長期になると認知行動療法のほうが勝っているかもしれないということになります。
この結果をどのように考え、意思決定に生かすのかは個人の考えによるかもしれませんが、少なくとも最近の欧米の基準で考えた場合には、認知行動療法が選択される場合が多いようです。
日本では、医療機関で専門的な認知行動療法を行える準備が(制度上も含めて)ほとんどありませんので、選択の幅は大きく制限されているのが現状と言えます。