子どもの精神疾患について、ADHD等の特に男子に多いとされているものや早期に現れて成熟するとともに軽減するものが知られています。
その他にも、青年期以降に主として認められるとされてきた疾患が児童期にも表れることが指摘されていますが、実際のところ全体としてどのような頻度で出現しているのか、全体像の把握はこれまで行われて来ませんでした。
今回は、デンマーク行われた100万人以上を含む大規模な研究で、児童・思春期の精神疾患罹患率(累積罹患率)をみた研究をご紹介します。
児童・思春期における全ての精神疾患に関する罹患率と累積罹患率
デンマークで1995年1月~2016年12月に出生した国民、約130万人が調査の対象となりました。
結果として以下のようなことが示されました。
①18歳以下全体の精神疾患への罹患率は15.01%(男子15.51%、女子14.63%)でした。
②女子において最も多かったのが不安障害で、罹患率は7.85%でした。
③男子において最も多かったのは注意欠陥多動障害で、罹患率は5.90%でした。
④女子の方が男子よりも罹患率の高い疾患として、統合失調症、強迫性障害、気分障害が示されました。
⑤男子においては女子よりも早期に発達障害が発見される傾向がありました(例:注意欠陥多動障害について、男子8歳、女子17歳)。
⑥6歳以前の精神疾患全体の罹患率は2.13%(男子2.78%、女子1.45%)でした。
まず、精神疾患が15%の子どもたちに診断されることについて、多いとみるか、思ったよりも少ないとみるかは意見の分かれるところだと思われます。
このような資料が、大きな規模では国や公共団体の政策として、あるいは日常診療の場でも生かされると(例えば上記の⑤の性差の開きは、生物学的な要因より診断の遅れが考えられるので、女子においては注意する必要がある等)、より児童思春期の精神医療が細やかなものに変化する可能性があると思われました。