PTSDに対する精神療法として「暴露反応妨害(エクスポジャー療法)」等様々なものがありますが、実施の容易さや有効性・副作用の点でハードルを高く感じます。
今回は、境界性パーソナリティー障害の治療法として開発され、PTSDへの応用されたDialectical Behavior Therapy for Posttraumatic Stress Disorder (DBT-PTSD):弁証法的行動療法(PTSD応用版)と、従来からPTSD治療で定評のあるCognitive Processing Therapy(CPT):認知処理療法とを比較して、どちらが有効かを調べた研究をご紹介します。
PTSDに対する弁証法的行動療法(DBT)と認知処理療法(CPT)の複雑性PTSDへの有効性比較
まずDBTについて教科書“Synopsis of Psychiatry (eleventh edition)”を抜粋すると、以下のようになります。
「弁証法的行動療法(DBT)は境界性パーソナリティー障害の治療法として最も経験的に支持されている心理療法である。簡潔に言えば、この療法の目標は慢性的で広範囲な人生の問題に苦しむ患者の生きる価値を創造することである。……患者は対人的スキルの向上と自己破壊的行動を減らすことを目標として、助言やメタファー(比喩)、語り(ストーリーテリング)、直面化を含むテクニックを用いて、毎週治療を受ける。…」(訳はブログ著者)
もう一つはCognitive Processing Therapy(CPT):認知処理療法で、ウェブの説明を要約すると、以下のようになります。
認知処理療法(CPT)は虐待・戦闘・天災等様々な心的外傷イベントを経験した後に生じたPTSDの症状を減らすために有効は方法であり、12回のセッションで心理的外傷に関連した生活に支障のある信念に挑戦し、修正することを援助するものである。……
子ども時代の虐待からPTSDに罹患した女性193人(平均36.3歳)がDBTとCBTのグループに振り分け、効果を調査しました。
結果として、以下の内容が示されました。
①両方の心理療法で症状の改善を認め、わずかにDBTの方が、CPTよりも改善の程度が大きくなっていました(この研究で用いられているCAPS-5という指標で4.82の差)。
②DBTの方が、CPTよりも大きな症状改善を認めた割合が多く (55.8% vs 74.5%)、寛解率も多くなっていました(40.7% vs 58.4%)。
つまり、新しく応用されたDBT(弁証法的行動療法)の方が、従来からのCPTという認知療法の一つよりも、効果が高かったと言えそうです。
DBTは以前から境界性パーソナリティー障害の治療法として、有効性に関する証拠と定評がある心理療法であり、特に虐待と境界性パーソナリティー障害の合併率の高さを考えると、共通の治療的要素の存在を感じさせる結果でした。
#PTSD
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