PTSD(心的外傷後ストレス障害)については、生命や安全を脅かされるような著しく驚異的な体験(心的外傷体験)を契機として、フラッシュバックなどの「再体験症状」、外傷を想起させる場所など回避する「回避症状」、興味や関心が乏しく、物事が楽しめなくなる「麻痺症状」、不眠、イライラ感、集中困難が生じる「覚醒亢進症状」が出現することが知られています。
PTSDに特化した認知療法が最も有効であると言われていますが、日本では(実施施設が少ないことや料金等の事情から)専門的なカウンセリングへのアクセスが困難で、薬物療法が中心となっています。
今回は、PTSDに対する薬物療法として頻用されるSSRIのうち、日本でも使用可能なセルトラリン(ジェイゾロフト)の効果を調べた研究をご紹介します。
Remission in post-traumatic stress disorder (PTSD): effects of sertraline as assessed by the Davidson Trauma Scale, Clinical Global Impressions and the Clinician-Administered PTSD scale
PTSDの寛解: PTSDの各尺度で調べたセルトラリンの効果
偽薬を対照とした2つの比較臨床試験が元になっており、PTSDの診断を満たす384人(75.5%が女性、平均38.4歳)が分析に含まれました。
抗うつ薬としてしばしば用いられる薬剤であるセルトラリンのPTSDに対する効果を偽薬を投与した場合との比較して調べています。
それとともに、PTSDの尺度の妥当性をClinical Global Impressions (CGI)を基準として検証しています。
結果として、以下の内容が示されました。
・セルトラリンでは症状の大きな軽減(寛解)が偽薬よりも多くなっていました(セルトラリン23.1~26.3% vs 偽薬13.9~14.9%)。
・PTSDに関する尺度である DTS( the self-rated Davidson Trauma Scale)とCAPS( the Clinician Administered PTSD Scale)の診断ライン(それぞれ20点未満と18点未満)は臨床的な障害の程度から考慮して妥当性があると考えられた。
要約:『セルトラリンはPTSDの症状を軽減するために有効である可能性がある』
PTSDにおいては、(特に専門的な治療を提供できない場合でも)支持的な対応を心がけるとともに、比較的医学的証拠のある薬物療法について検討することが望ましいと思われました。
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