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『心の臨床』 熊倉伸宏著

 

「人は、なぜ生きるのですか?」

 

そう問われたことのない(あるいは自らそう問わざるを得なくなったことのない)心の臨床家は少ないと思います。

 

「人生の意味は?」

「どうして自殺してはいけないの?」

 

同様の主旨を持つ究極の問いを突き付けられ、それに対する確たる答えを持ち合わせてない自分に愕然とする……そういう恥ずかしいことを繰り返してきました。そして、何度繰り返しても、やはり本気でそう問われた時、自分には目の前の人を納得させられるだけの答えがないことが分かるのです。

 

医者になったばかりの、若い著者は以下のように答えたと書かれています。

「なぜ生きるか。そう、私も考えるのですが、私にも未だに、その答えは分からない。私は科学的医学を学んだだけで、哲学、宗教など、人の生き方などを専門に学んでいないから、尚更、分からないのかも知れません」

 

後日、この問いを生き延びた患者さんは、上の答えに関する感想を次のように言われたそうです。

「あの時、『なぜ生きる』という問を、他のお医者さんにも聞いた。しかし、納得する答はなかった。先生は私に対して、『私も分からない』と答えてくれた。そして、『そういうことを考えていると、余計、苦しくならないか』と答えてくれた。それが私には救いになった」

 

ああ、このような答え方があるのだ、こんなふうに答えたら良いのか……でも、それは違うのでしょう。その時、その場所で、その相手だからこそ、正しくあり得た答えだったのでしょう。

 

私が、この本の記述から学ぶべきことは、きっとそういう言い方のコピーではなく、カウンセリングにおいて、そうした答えが醸成される得る人間関係の素地の部分なのだと思います。

 

いつか、私にも患者さんの救いとなるような「分からない」が言えるようになるかは分かりません。しかし、冒頭のような恥ずかしい経験について、なぜ、どうして、とぐるぐる考え続けることを止めてはいけないような気がしています。

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