◎要約:『子ども時代の逆境体験が多いと、その後の高齢者への虐待を行う可能性が高くなるかもしれない』
今回は、子ども時代の逆境体験(身近な存在の喪失や虐待など)が、その後の高齢者虐待へ連鎖するかを調べた研究をご紹介します。
暴力の世代間連鎖、子ども時代の逆境体験、高齢者虐待
Intergenerational Chain of Violence, Adverse Childhood Experiences, and Elder Abuse Perpetration
日本における研究で、インターネットでの調査に回答した20~64歳の13,318人(平均41.1歳、49.8%女性)が対象となりました。
この場合の子ども時代の逆境体験 adverse childhood experiences (ACEs)は身近な存在の喪失(死亡や離婚)、両親の精神疾患、暴力行為、子どもへの虐待(精神、身体的虐待、ネグレクト)を含んでいます。
結果として、以下の内容が示されました。
・逆境体験が多いと高齢者への虐待の起こる割合が高くなっていました(全体の平均は8.5%)。
・逆境体験がない場合に比較すると、逆境体験が一つの場合にはオッズ比で3.22倍、2つ以上の場合には7.65倍の傾向増大を認めました。
・他の影響する要素として、うつ病(オッズ比1.13倍)、うつ病以外の精神疾患(1.12倍)、自己評価での健康度(1.04倍)がありました。
今までにも虐待の世代間連鎖が指摘されてきましたが、子ども時代の逆境体験が広い領域、長期に及ぶことが感じられる内容でした。
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