不登校・ひきこもり
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~子どもが不登校になったらどのように接したら良いか?~ 

⇒「鍛える」や「変える」を一旦は放棄して、「支える」に徹する。

<注意>

・以下の例は、まだ父母が登校を諦めきれない状態(実際にはこういうことが多いと思われます)での会話をあげています。現在、多くの支援者・当事者がすすめる「最初に学校に行きたくないと言ったときが限界なので、すぐに休ませてあげてください」という内容とは異なります。

・もし、「不登校をまずは認めてあげてください」と言われて、「そうか。分かった」とお子さんをすぐに休ませてあげることができる親御さんは、是非そうしてあげてください。

・そんなに簡単に諦めることができない親のための「次善の策」と思っていただければと思います。私はいわゆる登校しぶりはあっても、まだ学校に時々行けている「不登校前兆期」から、「完全不登校期」や登校に関する葛藤が少なくなる「不登校安定期」に至る臨界期が一番重要であると考えています。

・残念ながら、こうすれば登校できるようになりますというような処方箋ではありません。むしろ、この臨界期を親子の関係を崩さずに安全に乗り切っていただくための会話の運び方を提示したものです。

・「本当に学校にいけないのだろうか? いけないのではなく、行かないのでは?」「甘えではないのか?」等の疑念が払えない親御さんが、なるべくお互いに傷つかないようにこの段階を越えていただくための話し方や考え方を提案しております。

・結果として、「登校開始期」に移行する場合も、「完全不登校期」に移行する場合もあり得ますが、どちらにしても親子の関係を最優先にして、信頼感を失わずに移行していただければと思います。最終的にはその「信頼感」が立ち直りの糧になります。

 

<起きないとき>

状況:ベッドにいる子どもの起床を促すが、起きようとしない

母: もういいかげんに起きなさい! 何時だと思ってるの!? 今日も学校に行かないつもり?

(いきなり非難する調子になっている。まずは中立的に起床を促す)

⇒もう起きたほうが良いと思うよ。ぎりぎりになるとしんどいから…。(相手の立場に立った理由付けを加える)

 

本人: あと……もうちょっと。

 

母: もうちょっとじゃないでしょ! さっきもそう言ってたじゃない! もう、遅刻ギリギリなのよ! このままじゃ、また行けないじゃない!

(とりあえず、責める調子になるのを控える。冷静に具体的な行動を提案する)

⇒起きて、ご飯だけでも食べない?

 

本人: うるさいな! もう少しで起きようと思ってたのに、起きる気分じゃなくなった。(布団を被る)

 

母:(布団を引き剥がしながら)ちょっと、何やってんのよ! 眠いのは、昨日遅くまで起きてたからでしょ? 

(物理的な強制は避ける。暴力に発展する可能性を高めてしまう)

⇒眠いかもしれないけど、何とか起きよう。(共感を示しながらの行動の促し「~かもしれないけど……」のかたち)

 

本人: 黙ってろ! 今日、行けないのはお母さんのせいだからな!

 

母: 何いってんの!! 自分のせいじゃない! 自分の責任くらい自分で取りなさいよ! もういくつだと思ってんの?

(真っ向から相手の言葉に反応している)

⇒もう少しだったら時間があるから、起きてご飯食べようか?(ネガティブな言葉には反応しない。ひたすら、具体的な行動を冷静に提案する。しかし、しつこくならないように、言葉を変えながら、間をとって行う)

 

本人: うるさいな! 人が眠ってるんだから、邪魔すんなよ!

 

母: 何考えてんの!? 今日行かなかったら、単位が危ないって言ってたでしょ? 

(現実への直面化。最も追い詰める可能性がある方法なので慎重に行きたいところ)

⇒眠いとは思うんだけど、今日行かないと、単位がやばいよね。(「~とは思うけど、…」で共感を示した上で、事実を相手が把握する形式、なるべく主観的な言葉で伝える)

本人: 単位? そんなの知らねえよ!

 

母: 一体どうすんのよ!? これから先。お母さん、お前の面倒みるのは嫌だからね!! どうして学校も行かない子の世話なんかしなくちゃならないのよ?

(ネガティブな結果を前提として話をすすめている)

⇒もし、すぐが難しいなら、行けるタイミング行こうか? いつだったら行きやすい?(行けることを前提として話してみる。厳しい前提の中で、相手の想像できる許容範囲を探っている)

 

本人: だから学校いけないのはあんたのせいだって言ってんだろ!

 

母: もう、学校辞めるんなら家から出ていきなさい!

(どんどんネガティブな方向で話をすすめている)

⇒今すぐ行けなくても、顔だけでも洗ってくる? お母さんができること手伝うから(目標を切り下げながら、再度、具体的な行動の提案。こちらが味方であるという姿勢を伝える)

 

 

ポイント

批判、非難、否定はとりあえずストップ。具体的な行動の提案を冷静に行い続ける。

 

 

<身体症状から登校を嫌がるとき>

状況:吐気を訴え、学校に行きたくないと言い出した。 

本人: なんか、……気持ち悪い。吐き気がする。

 

母: 昨日もそんなこと言ってたじゃない?

(過去のことを指摘して、反省を促している)

⇒気持ちが悪いのね。昨日からだから、つらいわね。(相手の言葉の一部をもらってから、共感の言葉につなげている)

 

本人: しょうがないじゃん。気持ち悪いんだから……。

 

母: どうして、気持ち悪いのよ。

(原因の追究を行っている)

⇒つらいんだったら……吐き気止め、飲んでみる?(共感の言葉から、具体的な行動の提案を行っている)

 

本人: 知らないよ、そんなこと。

 

母: 昨日、病院行って検査もしたじゃない?  検査では何ともなかったでしょ?

(現実への直面化。相手の痛いところをつく対応)

⇒病院の検査で大丈夫だったから、重たい病気ではないと思うけど……つらいのね。(事実は認識させながら、最後は相手の主観に合わせる)

 

本人: ……

 

母: 昨日だって、先生が電話で聞いたら、もう治ったとか言ってけろっとしてたない?……お母さん、今度の面談恥ずかしくて行けない。

(世間体を気にする言葉は相手を傷つけやすい)

⇒昨日、先生の前では治ったのは、安心したのかもね……(相手にとっての主観的な言葉を使いながら、気持ちとの関連について気づきを促している)

 

本人: ……そんなこと言ったって、あのときは治ったと思ったんだから仕方ないでしょ?

 

 

母: 一体、どこが悪いの? はっきり言わないと分からないじゃない!

(本人でも分からないことを追及している。自分のいら立ちをぶつけている)

⇒分からないけど、苦しいのね……少しでも楽になるようにしてあげたいけど(本人の感じ方を肯定する。こちらが味方であることを伝える)

 

 

 

本人: はっきりしてたら、最初っから言ってるわよ。

 

 

母: とにかく、今からでも良いから学校に行きなさい。

(強制的なニュアンスで行動を伝えている)

⇒学校行くの……少し、休んでからにしようか?(学校に行くことを目標としては伝えながら、一時的な休養を提案している)

本人: 行けないって言ってるでしょ!

 

 

母: だって理由がないじゃない! 病気じゃないんだから、仮病でしょ? 

(完全否定の言葉になっている)

⇒気持ちも関係あるかもしれないから、まず、気持ちを休めようか?(心理的な影響を示しながら、断定はしない。次に何をしようか、と検討する姿勢)


ポイント

過去のことは言わない。出発点をいつも今とする。「今、できることは?」という視点。

 

 

<理由は不明で登校を嫌がるとき>

状況:理由は言わず、登校を嫌がっている。 

本人:学校、行きたくない。

 

母:どうしたの? どうして行きたくないの?

(「どうしたの?」が心配のサインではなく、原因追及につながっている)

⇒どうしたの……何かつらいの?(共感を重視する言い方、相手の主観を示す言葉を使う)

本人:なんとなく……。

 

母:なんとなくじゃ、分からないでしょ!

(「なんとなく…」という言葉はとても大切に扱う。自分の感覚に対する違和感をそのまま表現した言葉。引っ掛かりを生かす視点で関わる)

⇒なんとなく、か……どうしてなのか、言いにくい感じなのね。

 

本人:だって、行きたくないのに……仕方ないじゃん。

 

母:どうしたの?! 学校でつらいことでもあるの?

(原因に関する問いかけ。詰問する調子にならないように注意。受容的な態度を示すため、ゆっくりとした調子で話す)

 

本人:別に……そういうわけじゃないけど。

 

母:じゃ、どんなわけがあるの? いじめられてるの? 友だちがいないの?

(回答の選択肢を示している。このうちどれかを選んで回答があったとしても、本当の気持ちである可能性は低い)

⇒……言いにくいのかも知れないけど、何か思いつくなら、お母さんに教えてくれる?(「……だけど」という言葉で始める。……のところに相手の状態を入れて、共感を示す。オープン・クエスチョンのままにしておく)

 

 

本人:友だちって……友だちなんて、もとからいないよ。

 

母:それじゃ、だめじゃない! 自分から友だち作らなきゃ。自分で積極的にならないとみんなも打ち解けてくれないわよ。……先生にも、相談したの?

(本題から話が逸れている。一番優先してして話したいことに話題を絞る。そうでないと、単なるくどくどとした説教になってくる。)

⇒そうか、友達いないのね……。

 

本人:相談なんかするわけないでしょ? なんであんなやつに「そうだん」しなきゃなんないのよ!?

 

母:だって、先生でしょ? こういう時に相談しなくてどうすんのよ! 先生、嫌いなの?

(相手が弱っている時に正論は言わない。常識的な立場ではなく、本人の立場を考える)

⇒先生にも、相談しにくいのね……。

 

本人: 嫌いとか、そういう問題じゃないんだって……。本当、何にも知らないくせに、偉そうにいわないでよ。

 

母:偉そうにって……じゃ、わけもなく学校に行かないのが偉いの?

(相手の言葉に正面から反応してしまっている。けんかを売られて、買うかたちになっている。挑発的な発言があっても、中立的な態度で受け取っておく)

⇒うん……そうだな。(間をとって)……でも、せめて、どうしたら楽になるか一緒に考えようか?(協働の姿勢を伝える)

 

 

本人:うるさい! もう、あっちに行っててよ。もう、出て行ってよ!

 


ポイント

挑発的な発言は本人が苦しんでいる証拠。中立的に受け取った後、何ができるか、一緒に考える。

 

 

<何とか登校を促したい(どうしても「行かなくても良い」とは言えない)時>

状況:今日学校に行けなけなければ、留年が決定すると分かっている。

母:これ以上休んだらダメなんだから何とか行きなさい。

(相手を否定→命令という流れになっている) 

⇒つらそうね、……今日、行けるといいね。(共感からスタート)

本人:行けないって言ってるだろ!?

母:今日は引きずってでも連れて行くからね。

(相手の意思を無視し、強制する意図を伝えている)

⇒学校行くとき……、送ろうか?(本人を助けたい意図を伝える)

 

本人:やってみろ! 絶対行かねえからな!

 

母:学校行かなくて、一体どうするつもりなの!?

(相手を追い詰める質問になっていないか?)

⇒もし、学校に行かないなら、……今じゃなくていいから、これから何をするか、一緒に考えていこう。

 

本人:知らねえよ! そんなの。

 

母:学校行かなかったら、この家に居させないからね!

(本人の居場所を無くして追い詰めようとしている)

⇒少し休んで、それから学校のことも考えようか。(学校に行ける可能性を否定せず、少しの留保を行う)

本人:うるさい! ここはオレの部屋なんだから、アンタは出ていけよ!

 

母:アンタの部屋じゃないでしょ! お父さんがお金払ってんだから、アンタは住ませてもらってるんでしょう!

(本人に劣等感を抱かせて、追い詰める内容になっている)

⇒もう少しだけ、話をきかせてくれる?(相手の気持ちを確認する対応)

本人:じゃあ、出ていけばいいんだろ! もう、働くから。

母:働くって……誰が、アンタなんか雇ってくれんのよ? 何にもできないくせに。一体何考えてんの?

(相手の能力を否定して、劣等感を煽っている。理解不能であることを伝えて、関係の分断を促す対応)

⇒無理をしなくても良いんじゃない? 今は、調子が悪そうだし。(行動を抑制したいときには、相手への配慮を伝えるかたちで行う)

 

 

本人:オレのこと否定ばっかりしやがって?

 

母:わけもなく学校に行かないって言われて肯定する親がどこにいるの? はい、そうですかって、言うわけ無いでしょ!

(相手の言うことにそのまま反応している)

⇒学校に行かないとあなたがもっとつらいことになるんじゃないかって、不安なのよ……。(自分の心情をなるべく率直に話している。あくまでも子どもを中心として。)

 

本人:あんたみたいに否定しかしない親が育てると、オレみたいに自信が持てなくなるんだよ!

 

母:テレビか、インターネットで聞いたようなこと言っての、ばっかじゃないの!

(相手の感じ方の真剣さを否定して、侮蔑する表現になっている)

⇒そう……自信が持てないのね。(こちらを批判した部分には敢えて触れずに、相手のつらさは受け取っていることを示す)

 

本人:あー、もう嫌だ!

 

母:嫌なのはこっちよ! あっ、ちょっと待ちなさい!

(本人が母を押しのけて、家から出ていく)

(自分被害者であることを主張して相手を非難しようとしている)

⇒今はもう何も言わないから、もう少しだけ待って。

 

 

ポイント

相手を言い負かそうとしない。むしろ「負ける会話」で、いたわりの気持ちを伝える。

 

 

 

 

<ゲームをやめさせようとする>

状況:ゲームをやめさせようとするが、言うことをきかない。 

母:いつまでゲームをやってるの!? もうやめて寝なさい!

(非難から入って、命令につなげている)

⇒もう、寝た方が良いわよ。(相手を非難せず、シンプルに望ましい行動を示す)

 

本人:あと、もう少し。

 

母:さっきもそんなこと言ってたじゃない!

(敢えて過去に目を向けて、本人を非難している)

⇒もうそろそろ、本当に寝た方が良いわよ。(少しだけ言い方を変えて、同じ目標を示し続ける)

 

本人:知らねえよ。あと、ちょっとで寝るって。

 

母:そんなこと言って……、また明日起きられないじゃない!

(悪い予想を伝えて行動を修正しようとしている)

⇒今から寝たら、きった明日は気持ちよく起きられるわよ。(ポジティブな側面を伝えて、行動をうながしている)

本人:……。(無視してゲームを続ける)

 

母:今すぐやめなさい! スマホ取り上げるからね!…… 返事しなさい!

(脅しと強制。親が権威を失っている場合は反発を招くだけの結果となる)

⇒早く寝た方が良いわよ。本当に明日の朝つらくなるから。(言い方を少し変えて、目標を伝え続ける)

本人:……。

 

母:(スマートフォンを無理に取り上げる)

(物理的な強硬手段をとっている)

⇒(一旦、引き下がってからもう一度見に来る。静かに目標を伝え続ける)

「もうそろそろ、遅いから寝た方が良いわよ。起きるときにつらいから」

 

本人:何すんだよ!! ちくしょう!!(母親を突き飛ばす)

 

母:親に手を挙げたわね! 警察呼ぶからね!

⇒(実際に警察を呼ばざるを得ない状況となってもできるだけ冷静に「お互いにとって危険を避けるため」であることを伝える)

暴力はやめて。…次に暴力が出るときは、みんなが冷静になるために警察に来てもらいましょう。

本人:呼べよ! 呼んだら良いじゃねえか! その代わり、その後どうなっても知らねえからな!

 


 

ポイント

少しずつ言い方を変えながら、一定の目標を伝え続ける。

 

 

<全体のまとめ>
重要点
①    「逆回転(今までとは異なるアプローチ)」をし始める時期は早いほうがおすすめ。
②    「子ども中心」になっているか?(「学校中心」、「世間中心」になっていないか?)
③    少しでも良い方向を「スモールステップ」で探せているか?(原因は分からなくても良い)

 

基本的対応

①「傾聴」(共感と協働の言葉を使う。情緒的交流の無いところでは、説得は成り立ちにくい)

②一定の目標を静かに伝え続ける。(相手の話を聞く間を取りながら、少しずつ言い方を変える工夫を行う。)

③促しができると思って説明を始めたら、強い抵抗がみられた時、もう一度傾聴の姿勢に戻るか、時間をおく。「正しさ」で押し切らない。むしろ「負ける会話」(本人の意図が通ったように思える会話)を心がける。

 

「打つ手なし」の場合

⇒次の選択肢の準備と生活の支えを行いながら、親子関係の悪化を避け、待てるところまで待つ。(待てるところがどこまでかは先生や援助者へ相談)

最終的に本人にとって苦しい選択肢を伝える場合でも、その段階までにどれだけ本人に共感を示し、一緒にできることを相談したのかが重要。少なくとも、できる限り「不意打ち」だけは避ける。