統合失調症に使用される薬剤は程度の違いはあっても、ドーパミン受容体に対する拮抗作用(ドーパミンの働きを抑制する作用)があり、これが抗幻覚・妄想作用をもたらす要素であると説明されます。
今回は、このような作用がなく統合失調症に有効ではないかと言われている薬剤KarXTについて、その有効性と安全性を調べた研究をご紹介します。
Efficacy and safety of the muscarinic receptor agonist KarXT (xanomeline–trospium) in schizophrenia (EMERGENT-2) in the USA: results from a randomised, double-blind, placebo-controlled, flexible-dose phase 3 trial
ムスカリン受容体アゴニスト(作動薬)KarXTの統合失調症への有効性と安全性
KarXTはムスカリン受容体という所に作用する薬剤 xanomelineと副作用軽減のためのtrospium chloride の合剤で、上記のように今までの抗精神病薬とは異なるしくみを持っています。
18~65歳の症状悪化があった統合失調症の罹患者252人が対象となりました。
KarXTを使用するグループと偽薬を使用するグループに分けて、その有効性と安全性を調べました。
結果として、以下の内容が示されました。
・最初と5週間後の精神症状の尺度(PANSS)でみると、KarXTが-21.2点、偽薬が-11.6点とKarXTが有効性を示していました。
・副作用においては便秘(21%)や食欲不振(19%)は比較的おおっく認めたものの、錐体外路症状(パーキンソン症状)や体重増加、傾眠はないか偽薬と変わりのないレベルでした。
要約:『統合失調症の新薬KarXTは統合失調症の精神症状に有効であり、通常の薬剤に認められる副作用が少ない』
通常の抗精神病薬は副作用のために服薬を中断せざるを得ない場合もあるため、新薬はメリットのある薬剤であると思われました。
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