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睡眠時無呼吸症候群に合併した狼狂(ろうきょう)


自分が獣に変化するという内容の妄想を獣化妄想ということがあります。


狼狂(ろうきょう):リカントロピー lycanthropy はそのうちの一つと考えられ、文化的な背景の影響もあって日本では少ないのかもしれませんが、海外においては認められる獣化妄想です。


今回は睡眠時無呼吸症候群に合併した狼狂の症例をご紹介します。


睡眠時無呼吸症候群を合併した精神神経疾患における狼狂


20歳から統合失調感情障害に罹患している41歳の男性で、中途覚醒、夜間の興奮、攻撃性、幻聴、大きな吠え声、そして狼に変化していく幻覚を経験していました。彼に尋ねると、狼に変化していくのだという声が聞こえるのだと言います。鏡を見ても、自分だとは思わず、狼が見えると訴えます。これまでに多くの薬剤(抗精神病薬、抗うつ薬、鎮静剤、抗けいれん薬)を服用してきました。彼は肥満体型で、高度のいびきがあったので、睡眠の検査をしました。結果として、睡眠は著しく細切れにされており、深い睡眠が著しく減少していることが分かりました。残念ながら標準的な治療法である酸素療法は自己中断してしまい不可能でしたが、減量には成功し、その後高度のいびきと狼狂は消失しました。


この報告内では、この狼狂の現象に、様々感覚の統合を行う脳の頭頂葉と呼ばれる部分の障害が関わっているのではないかと述べています。


さらに睡眠時無呼吸症候群では、浅い睡眠が増えるため幻覚を生じやすいコンディションが形成される可能性があります。


あまり注目されることの少ない病態ですが、睡眠時無呼吸症候群は確実に増えている疾患であり、幻覚の訴えには注意したいと思いました。

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