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認知症とウィルスとの関係


病気の原因について、多くの仮説が生まれては消えていき、あり得そうにないことが原因であることもあります。

最もシンプルな病因の一つに、病原体による感染があります。

元々、現在の医学が感染症の研究を原型として発展したので、その原因である病原菌の減少によって治癒がもたらされるという、比較的単純な解決の図式が成り立ちやすいと言えます。

今回は認知症のうち最も多いアルツハイマー型認知症の発症・進行にウィルス感染が大きく関わっているかもしれないという研究を取り上げます。

独立したアルツハイマー型認知症コホートのマルチスケール解析で、ヘルペスウィルスによる分子的、遺伝的、臨床的相互作用の破綻が判明した。

Neuron 9, 1-19, July 11, 2018

非常に大まかに研究の内容を示すと、アルツハイマー型認知症に罹患した集団の脳内変化を様々な指標を用いて調べることにより、ヘルペスウィルスの病気への関与を証明したということです。

アルツハイマー型認知症の原因については、多くの仮説が存在しますが、その一つであるウィルス感染の関与を追及している流れに、比較的大きな証拠が現れたと言えます。

特に、今回は分子的、病理的、臨床的な様々な指標と、アルツハイマーの発症には至っていないけれども細胞レベルの変化は生じているpreclinical(発症前)の病態まで解析の対象とすることによって、HHV-6A、HHV-7というヘルペスウィルスが正常組織に比較して増加していることや、その病原体によって作られる様々分子の増加を確認しています。

要するに今までより、詳しく、多くの角度から、多くの対象を研究することで、ウィルス感染による影響のより確かな証拠をつかんだと言えます。

表現の端々に著者の自信が伺える大きな研究で、図表も美しく、視覚に訴える工夫がなされている説得力のある内容となっています。

もしかすると、10年後にはアルツハイマー型認知症が感染症として、抗ウィルス薬で治療されているかもしれない……そんな未来を想像させる論文でした。

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