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逆境と脳画像(レジリエンスの見え方)


昨日、レジリエンスについて書いていて、思い出した論文があります。少し前のものですが、ご紹介させてください。

うつ病の高リスク患者において、人生初期の逆境が脳白質の拡散性変化にどのような影響を及ぼすか

J Psychiatry Neurosci 2012; 37(1):37-45 

以前の研究で、うつ病を経験した方の血縁者(以下、血縁者)や、幼少やごく若い時に強い逆境を経験した方では、うつ病の発症率が高まることが示されています。

今回の論文では

①血縁者と一般人で、どのような脳画像上の違いを認めるか、

②血縁者のうち、より強い逆境を経験した場合に、それが脳画像にどのような影響を与えるか、

以上の2点について主に調べています。

結果は次のようになりました。

①については、血縁者のほうが広い範囲で脳画像上のある要素(anistropy“異方性”)がより大きいことが分かりました。これは発症する前の段階で脳に何らかの変化(画像で確認できる変化)が生じていることを意味します。

②については、同じリスクを抱えた血縁者の中でも、より強い逆境を経験した場合は、上記①の脳画像上の変化がより大きいことが分かりました。

以上2つの結果を、大まかにまとめると以下のようになると思われます。

①うつ病を発症した人の血縁者⇒(症状がなくても)脳画像上の変化を認める

②血縁者+強い人生初期の逆境⇒ 上の場合より脳へのさらに大きな変化が生じる

主な結果は上記のようなものだったのですが、この論文で議論されていたのは、結果の先にあるものです。

同程度の逆境(これを測定するのも困難ですが)を経験しても、画像上の変化には違いがありました。この違いを生むものは何でしょう?……同じようなつらい目にあっても脳の変化を来さない抵抗力の源に関する研究が役に立つだろうと言及されていました。

人間のレジリエンス(ここでは逆境によっても脳の変化を起こさない抵抗力)はこんなふうに、画像検査で見える形にすることも可能なんだと、印象に残った内容でした。

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