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『レナードの朝』


薬物療法の劇的な効果をめぐる光と影を描いたヒューマンドラマです。

レナードを演じたロバート・デ・ニーロとセイヤー医師を演じたロビン・ウィリアムズの演技もすばらしく、いつまでも余韻が残るストーリーとともに高く評価され、アカデミー賞において作品賞、主演男優賞(ロバート・デ・ニーロ)、脚色賞でノミネートされました。

次に大まかな話のすじを紹介させてください。

児童期から嗜眠性脳炎と呼ばれる病気に罹ったレナードは中年になるまでの数十年間を、無動固縮(動きがなく、固まったように見える)状態で過ごしてきた。レナードが長期入院していた病院に赴任してきたセイヤー医師は、同様の症状を示す患者のある反応をヒントに薬物療法の可能性に思い至る。L-ドーパというパーキンソン病向け薬剤の投与により、数十年の無動から目覚めたレナードはそれまで失われていた人間らしい生活を謳歌し始めた。しかし、徐々に薬の効き目は減少し、元の状態に戻っていく。この病院に来るまで研究にしか興味がなかったセイヤー医師だったが、レナードの喜びと絶望の過程に寄り添う中で、患者たちの人間的な感情に共感を深めていく。

前半では、ささいなヒントから改善への糸口を掴もうとする治療への取り組みに感銘を受けましたが、この映画の中心は、一度得たものが再び失われていく過程、耐え難い患者の苦しみと喪失にいかに寄り添うか、その姿勢にあると思われます。

治療者としての在り方が問われるだけでなく、人が苦しむ他者とどのように歩んでいくか、人間としての基本的な姿勢が問われる内容で、深くしみじみとした印象を残すドラマです。

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