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“抜毛症”について


時々、毛を抜くのが止められない患者さんがいます。疎通がとれる方で、その理由を聞いてみても、はっきりしないことが多く、精神的な安定を図りながら、完全な治癒には至らず経過をみるしかないことがあります。

医学大辞典(医学書院)では以下のように説明されています。

トリコチロマニー trichotillomania 【抜毛症】

身体の毛、主として頭髪を引き抜く症状で、女子により多くみられる。基礎疾患として特有のものはなく精神発達遅滞、てんかん、神経症、精神分裂病、進行麻痺、老年期精神病など多くの疾患でみられることがあり、症候群として扱われている。抜毛時快感を訴えることもあるが自覚症状のない場合が多く、本人よりも家族が心配して皮膚科を受診させたりする。原因が明らかな場合はその治療を行い、そのほかの場合は母親を含めた精神療法が必要である。

私も発達障害や知的障害で経験した場合が多く、眉毛や前頭部の毛髪がなくなり、外見上の支障となっていたことがあります。

薬物療法の効果がある場合もあり、一般的なのは抗うつ薬による治療です。

このように抗うつ薬は、気分の落ち込みや意欲の低下のみでなく、様々な病態の治療に使われます。この場合は、抜毛を強迫行為(やめたいと思っても止められない行為)の一つとして捉えて、セロトニンという物質を補うことでその改善を図る目的での使用になります。

薬物療法以外にも、それを気にする家族との関係を反映することもあり、周囲も含めた精神療法的アプローチを要することがあります。この点では摂食障害の治療と似通った面があります。

このように一つの行動として表現される症状であっても、その原因は様々であり、影響を与えている要因を個別に考えて、多面的に治療する必要があります。

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