以前、学会で本田先生の講義を聞いて、あまりの分かり易さに、思わず会場で売っていたこの本も買ってしまいました。
執筆の方針についてふれている部分を抜粋します。
「……単に既存の情報を整理しただけの啓発書ではありません。『自閉症スペクトラム』について実感を持って深く理解し、生活に活かせる知識と知恵を身につけていただくことをねらいとしています。」
ここに、この本の特徴が概ね書かれています。例が豊富で目に浮かぶような描写がされており、映像的にも頭に残り易く書かれています。私は自閉症スペクトラム(またはアスペルガー障害)について考えるとき、冒頭に出てくるオーディオマニアのAさんを思い浮かべることが多いです。
そのように、本書は理解しやすいだけでなく事例が印象に残り易いという特徴があるようにも感じます。
そして、説明は丁寧でありながら、言い切るところはばっさりと言い切って、正確さよりは理解し易さを優先した記述も、一般書としては好ましいと思いました。
例えば、自閉症スペクトラムの特性を要約して、「臨機応変や対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強いこと」と言い切り、随所でこの特性に沿った説明をおこなっているため、読者の記憶にとどまりやすくなっています。
全体的にイメージが湧きやすいように書かれており、自閉症スペクトラムの特徴や対応の指針についてまず概略を知りたいという方には、この本をオススメしたいと思います。