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思春期の自殺防止に効果的な心理療法


自殺は思春期における死亡の主な原因の一つですが、その防止のための有効な心理療法について十分な証拠がないのが現状です。

この点について、以前から境界性パーソナリティ障害の治療を中心に行われているDBT(弁証法的行動療法)の応用が行われています。

DBTは、名前の通り弁証法的世界観に基づいており、弁証法と説得力のある対話や関係を用いた心理療法で、現実を変わらないものとして捉えるのではなく、むしろ対立する力(テーゼとアンチテーゼ)を内包し、そうした対立を統合することによって新たな対立する力へと進化するものとして考えます。

今回は、少し前のものですが、このDBTと他の心理療法(一般に行われることの多いグループセラピー)との比較を行った研究をご紹介します。

思春期の自殺防止に対するDBT(弁証法的行動療法)の有効性

4か所の治療施設における173人の自殺未遂、自傷行為を伴う思春期の患者(12~18歳)が対象となりました。

DBTはグループセラピーよりも有効と思われる結果になりました。例えば、

①自殺未遂においてはDBTが90.3%の治療の受けた患者でそのような行為がなく、グループセラピーではこの数字が78.9%にとどまりました。

②また、同様に自殺目的ではない自傷についてはDBTが56.9%、グループセラピーが40.0%でした。

以上は6か月に及ぶ治療期間終了後のデータで、1年後フォローではこの差は縮まっていました。しかし、概ね効果は残存しており、DBTは自殺防止に有効な心理療法であると考えられました。

このように、なかなか決め手になるような心理的介入の方法がない中で、少しでもより有効な方法が提案されることは意味があると思われました。

当院で専門的にDBTをやる準備は今のところありませんが、個人的な心理療法に今後エッセンスを取り入れることができるようにしたいと考えました。

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