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抗不安薬の使用法が変化している


不安を鎮めたり、睡眠を促したりするのに良く使用される薬剤にベンゾジアゼピン類(系)と言われる薬の種類があります。非常にたくさんの薬剤がありますが、その分類をおおまかに示すと以下のようになります。

①抗不安薬(マイナートランキライザーとも呼ばれる) 適応:神経症、疾患によらず不安・緊張状態、睡眠障害 作用機序:GABAの作用を増強する(アルコールと共通) 副作用:眠気、ふらつき、脱力、薬物依存(処方薬依存) 例:デパス、ソラナックス、ワイパックス、レキソタンなど

②睡眠薬 適応:睡眠障害(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒)、興奮 作用機序:抗不安薬と同様(ベンゾジアゼピン系) 副作用:持ち越し効果、依存、離脱症状、反跳性不眠、記憶障害 例:デパス(抗不安薬と共通)、マイスリー、ロヒプノール、ベンザリンなど

10年以上前までは、上記のように使い方として①抗不安作用(不安を鎮める作用)②睡眠導入作用(眠りやすくする作用)が使用法の中心で、処方する医師も精神科医が中心だったのですが、そのあたりの事情が特にアメリカでは(日本でも徐々に)大きく異なってきているようです。

アメリカの外来におけるベンゾジアゼピン類の処方パターン

2003年から2015年にわたって40万件程度の外来で行われた治療が調査の対照となりました。

①まず、全体のベンゾジアゼピン類の使用が2003年と2015年を比較しておよそ2倍(外来治療の3.8%→7.4%)に増加していました。

②ベンゾジアゼピン類のオピオイド(強い鎮痛薬)との併用は4倍(0.5%→2.0%)に、他の鎮痛薬との併用はおよそ2倍(0.7%→1.5%)に増加していました。

③精神科医による処方については変化はありませんでした(29.6%→30.2%)が、他の診療科の医師(特に一般内科医)による処方が2倍(3.6%→7.5%)に増加していました。その結果、全体のベンゾジアゼピン類の処方の半分以上(52.3%)が一般内科医によるものになっていました。

ベンゾジアゼピン類の依存性、過量服用による自殺が問題となっています。

鎮痛剤のみで効果がない場合にベンゾジアゼピン類が追加される用法が日本でも徐々に行われてはいますが、薬剤の性質に関する理解が不十分だと相互作用や薬剤独自の副作用による健康被害が懸念されます。

論文中では現在全くこの方面でのガイドラインがないことの問題が指摘されていましたが、アメリカに限らず世界的に見て、用途や用量の拡大に一定の歯止めが必要な状況と言えそうです。

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