本来、心地よいと感じていた活動、快楽の対象から快感や喜びを得られなくなった状態をanhedonia(快感消失、無快楽症)ということがあります。
うつ病や精神病性の疾患の症状としてみられることがありますが、気分の落ち込みや興味の喪失の一部と捉えられて、最近は症状の単位として記載されることが減っているような気がします。
今回は、この症状には独自の脳内機序があるのではないかという内容の論文を紹介します。
アンヘドニア(快感消失)の画像所見と子どもの脳機能との関連
Adolescent Brain Cognitive Development studyという研究で集められている約2800人の子ども(9~10歳)の脳画像が調査の対象となりました。
安静の状態、報酬の期待が行われている状態、作動記憶というごく短期の記憶のテストをしている状態で脳の画像が調べられました。
脳の覚醒状態に関わるcingulo-opercular回路と言われる部分や、報酬に反応する線条体と言われる領域の一部の活動低下が認められ、これはうつ状態やADHD等、他の状態では認められない所見でした。
これは、アンヘドニアを脳機能から考えると、「覚醒の低下+期待の低下」として捉えられるということかもしれません。
このようにその症状が本当に他の症状の一部ではなく症状の単位として取り上げる価値のあるものなのか脳の働きで確かめられる場合があります。
アンヘドニアは上記のように、敢えて記載されるということが減った症状の一つですが、抑うつそのものとは異なる症状の一つとして認識し、病態を捉える上での参考にしたいと思いました。