うつ病で低下している神経と神経の仲立ちをする物質(神経伝達物質)として、セロトニンが有名ですが、本日は線条体のドーパミンについてもかなり一貫した低下があるのではないかという内容の論文をご紹介します。
うつ病におけるドーパミン・トランスポーター(DAT)結合の評価
25人の薬剤を服用していないうつ病患者と25人の健常者とをドーパミンのレベルを間接的に評価可能なPET(positron emission tomography)で比較しました。
うつ病の場合、被殻や腹側被蓋野と呼ばれる脳の領域で顕著なDAT(ドーパミン・トランスポーター)レベルの低下を認めました。さらに、うつ病のエピソード回数が多いほど、このレベル低下は著しくなっており、間接的ではありながらドーパミンのレベルとうつ病の病態とは密接な関係にあることが推定されました。
現在、様々な抗うつ薬が存在し、セロトニンを選択的に増加させるSSRIと言われるものやノルアドレナリンにも作用するSNRIが有名です。
患者さんがどのような症状かによって、どのような物質を補うべきか思い描きながら処方しているのが現状です。
しかし、今回の研究で用いられているような画像法が一般的になれば、処方の前に足りない物質を調べて、適切な薬物療法ができるのではないかと想像します。
今後このような基礎的な研究によって、より有効な薬剤開発や使用法につながることが望ましいと考えられました。