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境界性パーソナリティ障害に対するスキーマ療法の有用性


認知や思考の根底にある傾向(パターン)について“スキーマ”という言葉を用いることがあります。


特に、他の心理療法(認知行動療法等)が有効でない場合に境界性パーソナリティ障害等に対して行われることの多い心理療法として“スキーマ療法”が知られており、スキーマやコーピングスタイル(問題に対する対処法・行動スタイル)等に関する働きかけを含んでいます。


今回は、スキーマ療法が通常の治療法と比較して有効か、個人と集団ではどちらが有効か等に関して検証した研究をご紹介します。


境界性パーソナリティ障害に対するグループ主体のスキーマ療法、個人のスキーマ療法との組み合わせの有効性


5カ国(オーストラリア、ドイツ、ギリシャ、オランダ、イギリス)が参加したランダム化比較試験で、境界性パーソナリティ障害に罹患した18~65歳の495人(平均33.6歳)が参加しました。


246人(49.7%)が通常の治療、125人(25.2%)がグループが主体のスキーマ療法、124人(25.0%)が個人とグループを組み合わせたスキーマ療法を行い、境界性パーソナリティ障害の症状がどのくらい軽減するかを調べました。


結果として、以下の内容が示されました。

①すべてのスキーマ療法を合わせた結果と通常の治療を比較したところ、スキーマ療法が症状尺度(BPD sverity)で勝っていました(コーエンのdが0.73)。

②個人・集団組み合わせスキーマ療法では、通常治療より効果が大きくなっていましたが、集団主体スキーマ療法では効果の差が明らかではありませんでした。

③治療の継続性に関しては、個人・集団組み合わせスキーマ療法が、集団主体スキーマ療法や通常治療より勝っており、集団主体スキーマ療法と通常治療との差は明らかではありませんでした。


つまり、“効果や継続性の点で個人と集団を組み合わせたスキーマ療法のほうが、通常治療や集団を中心としたスキーマ療法よりも優れいているかもしれない”ということです。


以前から、境界性パーソナリティ障害に対しては、スキーマ療法が有効だということは知られていましたが、実施法の点で、集団を主体とするよりは個人の要素を増やす方が望ましいのかもしれません。

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