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子どもの重症うつに対するリチウム投与


双極性障害における躁状態の治療薬として有名なリチウムですが、(双極性障害の)うつ状態や希死念慮の治療薬としても用いられます。


通常は副作用の少ない薬剤ですが、治療域が狭く、比較的中毒が生じやすいこと等、使用する際には定期的に血液検査を行う等の注意が必要な薬剤です。


そのような身体的影響を考慮する結果、どうしても子どもの治療には用いにくいという印象があります。


今回は、希死念慮、攻撃性、焦燥感等の症状から抗うつ薬も使いにくかった症例で、リチウムによる単剤療法が効果を上げた症例をご紹介します。


双極性障害のリスクが高い重症うつの子どもに対するリチウム投与


女児。9歳の時から苛立ちやストレスへの過敏性、反抗、死にたいとの訴えを繰り返しました。一年後には、強い悲しみと苛立ち、家族から愛されてないという感覚が出現しました。父親と激しく口論するようになり、学校では活動に参加せず、成績は低下しました。過量服薬や袋を被っての窒息、ナイフで3度の自殺を図りました。11歳の時には、気分の落ち込みが著しく、自尊心が低下し、以前は楽しめていた活動にも興味が湧かなくなっていました。

母はうつ病、兄は双極性障害(リチウムの効果あり)と診断されており、家族歴や状態像から、双極性障害のリスクが高いと判断されていました。

重症うつと希死念慮の軽減を目標に炭酸リチウム300mg/日での治療が開始され、徐々に900mg/日に増量されました。

治療開始から12週間の経過観察で、気分の落ち込みは大きく改善し、希死念慮は消退しました。


児童思春期におけるうつ症状の治療では、抗うつ薬の服用により、焦燥感や攻撃性が悪化したり、自殺を含めた問題行動を活発にしてしまうことがあります。


特に、上記のような例では、薬剤選択として抗うつ薬が選択しにくい背景があったかもしれません。


そのような点について、リチウムによる治療は一部の副作用や中毒に留意すれば、抗うつ薬による弊害のようなことは少なく、安全に使用できる面があると思われます。


かと言って即座に子どものうつ症状に広くリチウムを使用しようという方針にはなりにくいのですが、選択が限られたときに、慎重に経過観察を行える環境であれば選択肢の一つとして考慮するべきかもしれません。


#双極性障害

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